「翔太、ママは手術は終わったけど、疲れてまだ眠っている、だから静かに声をかけるんだ、いいな」

「うん」

翔太はゆっくりと静香のベッドに近づいた。

「ママ、翔太だよ、今日ね、幼稚園でママの絵を描いたんだよ、先生に上手いって言われたんだ」

翔太は声をかけても返事をしない静香の顔をじっと見ていた。

「ママ」

「僕、ママに言われた通りにいい子にしてるよ、パパの言う事、ちゃんと聞いてるよ、
パパのお手伝いもちゃんとしてるよ、だから早く起きて、ママ」

翔太は強くて頭のいい子だと感心していたが、やはり、五歳の子供だと少し安心した。

静香に呼びかけながら、堪えていた涙が溢れ出し「ママ、ママ」って泣きはじめた。

「翔太、大丈夫だ、ママはすぐに目が覚めるよ」

そう言ってギュッと抱きしめた。

俺は翔太を抱き抱えて、マンションに戻った。

翔太は泣き疲れて眠ってしまった。

静香の意識が戻った時、もし、俺や翔太の記憶が無ければ、そんな静香と翔太を会わせることは、