でも、それはそれで、助かったと思った。

静香の方が説得するのに大変だろうと頭を悩ませた。

案の定、翔太を寝かせつけたあと、静香に話をし始めた。

「静香、ごめん」

「どうしたんですか、急に」

「俺は五年間静香を放って置いた、その間静香は悩み、苦しみ、誰にも相談出来ずに、

毎日辛い日々を送っていたんだな」

何のことを言っているのだろうと不思議な表情を見せた。

「先生から静香の病状を聞いた」

静香は驚きの表情に変わった。

先生には誰にも病気の事は内密にと釘を刺しておいたからだ。

「静香、手術を受けてくれ」

「いやです」

静香は即答した。

「なぜだ」

「記憶障害になるんですよ、先生から聞きましたよね、翔と翔太のことを忘れるなんて、そんな悲しい事出来ません」

「俺は静香に生きていて欲しいんだ」

「絶対に手術は受けません」

「静香」

「翔と翔太を忘れるなんて死ぬより辛いです」

静香は泣き出した。

俺は静香を引き寄せ抱きしめた。