静香は黙って俯いていた。

しかし、静香の容態はそんな甘くは無かった。

一年前、脳に腫瘍が見つかった。

手術をすれば命は助かるとの診断だったが、難しい場所にある為、後遺症は避ける事が出来ないとの事だった。

その後遺症は記憶障害。

静香は一人で悩み、苦しみ、お金もないし、俺と翔太を忘れる事など出来ないと、

薬で進行をなるべく遅らせる手段を選んだ。

俺が側にいてやれば手術も受けられたし、静香の悩みも苦しみも半分にしてやれたのに……

俺は一体何をやっていたんだ。

静香を失いたくないと避妊もせずに俺との結婚以外の選択肢を与えないようにした。

五年も放って置いて、連絡もせず、相談にも乗ってやれず、どんなに苦しく、

悲しかったか、俺は何をやっていたんだ。

静香の担当医師から静香の病状を聞かされ、愕然とした。


俺は翔太を連れてマンションに一旦戻った。

シャワーを浴びて、着替えを用意した。

俺のやるべき事は既に決まっていた。

日本に残りアメリカ支社を横溝に託す。