「大事な事ってなんですか」

「静香を抱きたい」

そう言うと、真壁くんは私を抱いた。

そして、ぐったりしている私にとんでもない事を言った。

「静香、俺と結婚してくれ」

「えっ、駄目です」

「どうして?」

「だって、真壁くんは社長なんですよ、私は相応しくありません」

「残念でした」

「はい?」

「避妊してないから、まもなく静香は俺の子供を妊娠する、だから俺のプロポーズは断れないよ」

「うそ」

「ほんと、次の休みに俺のマンションに引っ越してこい、一緒に暮らそう、それから婚姻届出しに一緒に役所に行こうな」

私は何も言い返す言葉を失い嬉しいような、でもとんでもない事になったと途方に暮れた。

「俺、これから会社行って来るから、夕飯作っといてくれる?」

「はい」

「じゃ、行ってきます」

真壁くんは私のアパートを後にした。

まさか、これが真壁くんとの最後になるなど誰が予想出来ただろうか。

真壁くんは会社に向かい、すぐにアメリカに渡米する事になった。