「この目で見たんです、間違いありません」

私は小刻みに手を震わせた。

「わかった、これからどうするんだ」

「もう、あんな思いはしたくありません」

「倉田」

「仕事に戻ります、申し訳ありませんでした」

私は本郷部長に深々と頭を下げた。

そして経理部に戻ると、後輩の恵美ちゃんが心配そうな表情で私を覗き込んだ。

「静香先輩、大丈夫ですか」

「大丈夫よ、仕事中にごめんね」

私は今夜もスマホの電源を落として眠った。

その頃、俺は静香のスマホの電源が入っていない事に愕然とした。

「どうしてだ、静香」

俺は親父に連絡を入れた。

「親父、俺を日本に戻してくれ」

「何を急に言っておる、結果も出さないで、日本に戻れるとでも思っているのか」

「仕事よりも大事な事があるんだ」

「ばかもん、お前はアメリカ支社で成果を残して、日本に戻ったら真壁不動産社長に就任するんだ、いいか、わしは五年を見込んでるが、もしお前が日本に戻りたいなら三年で成果を出し、日本に戻ってこい」

「三年?」