俺はあゆみを抱きしめた。

俺のキスにあゆみは可愛らしい声を上げた。

花屋の店舗は順調にオープンに向けて進んでいた。

あゆみは友梨ちゃんへバイトの話を通した。

俺はと言うと、やはり夜の世界に戻る事に躊躇していた。

あゆみと後どのくらい一緒にいられるのか、誰にもわからない。

一分一秒も無駄にしたくはなかった。

あの時、あゆみが手術を選択しなければ、今頃俺はこの世にはいなかっただろう。
術後認知機能障害により、あゆみの記憶は無くなったが、店をリニューアルさせて、ここまで大きくすることは出来なかっただろう。

何度もあゆみに巡り会えて、記憶がないにも関わらず、愛する事が出来たのも奇跡だろう。

俺はあゆみに店と子供を残したい、俺が生きていた証に。

明日、あゆみの花屋オープンを迎える前日、おれの気持ちをあゆみに伝えた。

「あゆみ、俺は夜の世界には戻らない、あゆみの店を手伝うよ」

「どうしてですか」

「一分一秒でもあゆみと一緒にいたいんだ」

あゆみは恥ずかしそうに俯いた。