あゆみも俺の背中に手を回しギュッと俺を抱きしめた。

「あゆみ、俺は浮気なんかしてないし、疾しいことは何もない、信じてくれ」

「わかりました、でももし、夜の世界に戻ると言うのであれば私は反対はしませんよ」

「戻らねえよ」

「はい、はいわかりました、今日は凌の病院の日ですよ」

「そうだった、体調いいから忘れてたよ」

「ランチ済ませたら出かけましょうね」

「ああ、そうしよう」

俺とあゆみは病院へ向かった。

俺は脳腫瘍で余命宣告を受けていた。

手術で生存率は上がるが認知機能障害の後遺症が俺の中のあゆみの記憶を消した。

俺は何度もの奇跡によりあゆみを愛した。

これから先脳腫瘍の再発と認知機能障害によりあゆみの記憶が消える可能性は無いとは言い切れないと言われている。

爆弾を抱えている俺との夫婦生活を、あゆみはどう思っているのだろうか。

俺はあゆみに俺の全てを残したい。
あゆみの望みである花屋の店、そして俺との子供。

俺の人生はこの先いつまでなのか、誰にも分からない。