「もう、凌ずるいですよ」

あゆみのこんな楽しそうな笑顔を見るのは久しぶりだ。

「それじゃ、俺が勝ったからあゆみは俺の言う事を聞いて貰うよ」

「わかりました、何をしたらいいですか」

「俺とあゆみの子供が欲しいな」

あゆみは驚いた表情を見せた。

「でも、流産の後は妊娠は難しいって言われました」
「産婦人科の先生に聞いてきた、規則正しい生活を送って、栄養のある食事を取るように心がけて、心配がない環境で暮らすと、授かる可能性があるって」

「本当ですか」

「うん」

「でも、規則正しい生活って考えたら、凌と今以上にすれ違ってしまいます」

「だから、これからは俺があゆみに合わせるよ」

「凌が私に合わせる?」

俺は自分の気持ちをあゆみに伝えた。

「俺はホストを辞める、店も人手に任せて、あゆみと一緒の時間を増やすよ」

あゆみは戸惑いを隠せない様子だった。

「ホストを辞める?」

「ああ、昼間の仕事をしようかと思っている」