「戸籍を見ればわかるだろう、あゆみさんは結城あゆみに戻り、あんたを忘れるために必死になって働いていたんだ」

「そんな……」

「あゆみさんは別れる前から自分の記憶がいつ消えてしまうか、その恐怖と葛藤していたらしい」
「そうだったのか」

「今度、あゆみさんの記憶が無くなったら、今度こそ彼女を開放してあげるのが、真の愛情じゃないか」

「じゃ、また来る」

加々美社長は店を後にした。

俺は戸籍を取り寄せ、加々美社長の話と照らし合わせ、全てが明らかになった。

俺の記憶は2年前、あゆみとの生活の中で、妊娠を喜んでいる状態で止まっていた。

流産してしまったあゆみを、何故俺は支えてあげられなかったんだ。
その期間の記憶がすっぽり抜けていた。

俺は同じ過ちを繰り返してはならないと自分に言い聞かせた。

俺はメグと別れた後、自分の夢であった店を軌道に乗せる事に集中していた。

しかし、過酷な試練を与えられ、俺の命は僅かと宣告された。

そんな矢先、あゆみと出会い、俺の命の寿命は延びた。