凌はしばらく仕事を休む事になった。
頭痛と手の震えが頻繁に起きるようになった。

「あゆみ、手の震えが止まらないんだ」

「大丈夫ですよ、深呼吸しましょうか」

そう言ってあゆみが俺の手を握ると、不思議な事に手の震えは治った。

「手の震え、治りましたね」

「俺さあ、あゆみがいないと生きていけねえな」

俺はそう言って微笑んだ。

俺の唇があゆみと動くと、あゆみはほっとした。

ある日、俺はとんでもない事を口にした。




「あゆみ、産婦人科の検診いつだっけ?」


えっ?あゆみは俺の言葉に息を飲んだ。
2年前の記憶が蘇ったの?
そう、私が妊娠していたのは2年前である。

「楽しみだな、俺達の子供」

どう言う事? ちゃんと自分の子供だと言うこともわかっている様子に、驚きを隠せなかった。

「病院へ行きましょう」

「どうしたんだ、急に……検診は今日だった?」

「あっ、違います、凌の病院です」
  
「俺の? 俺の病院は今日だっけ?」