あゆみは俺をどう思ってくれているんだ。
もう、誰とも結婚はしないと言っていた。
そうだよな、また、俺の中であゆみの記憶が消えたらと思うと、俺は恐怖しかなかった。


「お帰りなさい、食事の支度しますね」

「あゆみ、ごめん」

「私、ここにいない方がいいですよね」

あゆみは俺と顔を合わそうとせず、背中を向けていた。

「あゆみ、俺は……」

そこまで言いかけて、あゆみの肩が小刻みに震えているのに気づいた。

「あゆみ」

そして堪らずにあゆみを抱きしめた。

「もう、手放したりしないと約束するから、俺の側にいてくれ」

あゆみは泣いていた。

「凌、ごめんなさい、私、嘘を……」

「もういいよ、全て俺の責任だ」

その日、お互いを強く求めあった。
あゆみが欲しくて堪らなかった。
俺はこの時初めて神に願った。

俺の記憶からあゆみを消さないでくれと……

俺とあゆみは結婚した。
あゆみは専業主婦になり、俺を支えることになった。
あれから、俺は時々頭痛を訴えたからである。