こうして真実を知ったら俺が苦しむだろうと、あゆみは俺のことを気遣って、黙っていたんだ。

あの指輪は俺がプレゼントしたものなんだな。
ずっとはめていてくれたんだ。

俺は仕事が終わり、あゆみの元に帰った。

「お帰りなさい、お疲れ様でした、すぐに食事の支度をしますね」

俺はあゆみを引き寄せて抱きしめた。

「凌? どうかしましたか」

「あゆみ、俺は……」


俺はあゆみを抱いた。
愛おしくて堪らなかった。

でももし、また記憶が無くなったら、俺は冷たくあゆみを突き放すのか。
あゆみに再会したときの違和感は、これだったんだ。
強く惹かれた。記憶は無いが愛している気持ちが、俺の心の奥底にあったからだ。


「あゆみ、愛している、どうしようも無いくらいに」

「凌」

俺はキスを繰り返し、あゆみを抱き続けた。
このまま時間が止まってくれと願った。


俺はあゆみの左手の指輪にそっとキスをした。

「あゆみ、あゆみ、もう絶対に手放さない」