俺はやつが差し出した戸籍謄本を引ったくり、確認した。

まさか、あゆみと結婚して、離婚している。

「君はあゆみさんを一度手放してるんだな」

信じられなかった。

そして、次にやつが差し出したのが、俺の診断書だった。

「君は脳腫瘍で手術して、認知機能障害を起こしている」

やつの手から引ったくった診断書には確かにそう記載してあった。

「君はあゆみさんの記憶がなくなり、手放した、また同じことを繰り返すのか」

俺は戸惑いを隠せなかった。

「あゆみさんをこれ以上苦しめるのはやめてくれ」

やつは店を後にした。

俺はしばらく現実を受け止められずにいた。


俺があゆみを苦しめていた張本人だったとは……

あゆみは俺をずっと忘れられずに苦しんでいた。

あゆみに惚れて、プロポーズして、記憶が無くなったら離婚したのか。

俺はなんて酷いやつなんだ。

しかも一年経って、あゆみの前に現れて、初めてかの様に口説いて、戸惑うに決まってる。