俺はその時、迷路を彷徨っていた感じを味わっていた。
いくつか道が分かれて、その中の一つの道にあゆみがいた。
あゆみは俺の名前を呼んだ。
はじめは誰か分からず、背を向けようとした瞬間、「凌、あゆみよ、こっちへ来て」
とあゆみが手を差し伸べた。
俺はその手を取った、その時あゆみと認識出来た。

そしてあゆみとキスをした。
俺はこのままあゆみを分からなくなったら、あゆみを忘れたらと思うと、不安と恐怖で押し潰されそうな気持ちに、戸惑いを隠せなかった。

「凌」

あゆみは不安な表情を浮かべていた。

「ごめん、大丈夫だよ、何でもないから」

それから俺は病院へ行った。

「一瞬あゆみを分からなくなりました」

「どのくらいの時間でしたか」

「ほんの一瞬です」

「そうですか、様子を見ましょう、お薬を処方しますので服用してください」

俺は二度もあゆみに君を知らないと言ってしまう状態に恐れを抱き、記憶があるうちにと別れを考えていた。

俺は尋常じゃない頭痛に悩まされていた。