「結婚されたと報告受けていますよ、奥様に会って見ますか」

俺は驚きの表情を見せた。
そして、先生はあゆみを診察室へ招き入れた。

「麻生さんの奥様です」

先生はあゆみを俺に紹介した。
俺の中に全く記憶がない。

「すみません、俺はあなたを知らない」

そう俺の記憶の中にあゆみはいなかった。
俺はすぐ視線を逸らした。

俺は病室に戻り、しばらく入院を余儀なくされた。

「入院に必要な物持って来ますね」

「あの、名前なんて言うの?」

「あゆみです」

「あゆみ」

俺は視線を逸らし考え込んだ。

「ごめん、覚えてない」

「大丈夫です、気にしないでください」

しばらく沈黙の後、また俺は言葉をかけた。

「俺達何処で知り合ったの?」

「麻生さんが怪我をして、私のアパートで手当てして、私の料理を美味しいって食べてくれて……」

あゆみはそこまで言いかけて、涙が溢れて言葉を続ける事が出来なかった。

俺はあゆみの手を引き寄せ、頬の涙を拭った。