「私を一人にしないと約束してください」

俺は「わかった、約束する」そう言ったが、俯いてあゆみの顔を見る事が出来なかった。

それから恐れていた事が起きた。
俺が頭痛に苦しみ、緊急入院をする事になった。
昏睡状態になり、先生から緊急手術を勧められた。
しかし、俺は手術は希望していないと、その理由にあゆみは愕然とした。

そう、術後の後遺症で認知機能障害により、記憶が消えると言うのだ。

「凌の記憶から私の記憶が消える」

あゆみは俺のこれからの人生の事を考え、手術をお願いした。
たとえ俺の中から自分の記憶が消えたとしても……
手術は成功した。
俺は気がつき、先生の診察を受けた。


「自分の名前を言ってください」

「麻生 凌です」

「職業は何ですか」

「ホストクラブを経営しており、自らホストもしています」

「ご家族はいらっしゃいますか」

「家族?」

「はい、奥様とかお子さんとか」

「先生、俺は独身ですよ、家族はいません」