「梨花、大丈夫か」

梨花は慌てて目を逸らした。

まず俺は忙しく、会いにこれなかったことを謝った。

「梨花、ごめん、手術が重なり、マンションに戻った時には仮眠を取らずにいられなかった、でも気づくと仮眠じゃなく朝になっていた、すまない」

梨花は全く俺の方を向かない、俺は話を進めた。

「マンションの裏手に倒れていたが、俺に会いにきたのか」

梨花の口元がピクッと動いた。

「なぜ、俺に声をかけなかったんだ」

俺は梨花のベッドに近づき腰を下ろした。

梨花の頬に触れて、俺の方に向かせた。

梨花の目に涙が溢れてこぼれ落ちた。

「瑞穂さんを抱きしめていたから」

「抱きしめていたんじゃない、抱きつかれたんだ」

「瑞穂さんとよりを戻すんですよね」

「梨花、もう一度だけ言う、よく聞いておけ、俺は梨花と離婚しないし、瑞穂とよりを戻したりしない」

「契約だけの妻なら、私じゃなくてもいいんじゃないんですか」

俺は梨花を抱きしめ、そして耳元で囁いた。

「梨花、お前を愛している」