安藤さんが病室に入ってきた。

「また、食事残してる、ちゃんと食べないと栄養取れないよ」

「そうですね、最上さんは忙しいんでしょうか」

「ああ、外科は病院の中心だからな、最上は一流の外科医だからな」

「私は最上さんにとってお荷物ですよね」

「そんなことはないよ」

「だって、私は最上さんに一週間も会えないと寂しいのに、最上さんは平気なんですもん」

契約上の妻が必要なんだ、それなら私じゃなくてもいいよね。

私はすごくお金がかかるし、これ以上迷惑はかけられない。

でも、自分に言い聞かせても、最上さんに会いたい気持ちは誤魔化すことは出来なかった。

やはりその日の夜も俺は梨花の元へは行けなかった。

疲れがピークを超えていた。

マンションへ戻ると、瑞穂が俺のマンションの前にいた。

「どうしたんだ、瑞穂」

「丈一郎さん」

瑞穂は俺の姿を確認すると、駆け寄って俺に抱きついてきた。

「おい、瑞穂、俺はもうお前を愛することは出来ない」