「梨花様でしたら、三十分前くらいにお出かけになりました」

「どこに行くとか言っていなかったか」

「お出かけですかとお声をかけさせて頂いたのですが「はい」とお返事しただけで、それ以上は分かりません」

「そうか」

「梨花様がどうかなさいましたか」

「ちょっと言い争いになって、姿が見えないんだ」

「それはご心配ですね」

「俺は辺りを探してくる、もし梨花が戻ったら俺のスマホに連絡くれ」

「かしこまりました」

梨花、まさか、本当にやつを追いかけたのか。

それならそれでいいじゃないか、俺はなんでこんなにも慌てているんだ。

去るものは追わずが俺のスタンスだ。

それなのに梨花を探して、連れ戻そうとしているのか。

ありえないと思いながら、俺は必死に梨花を探していた。

駅まで行ってみたが見当たらない、梨花はスマホと財布を置きっぱなしだったため、

そう遠くへは行っていないはずだ。

スマホを置いてあるんだから、やつとは連絡出来ないよな。
俺は徐々に冷静になってきた。