もう、こんなに冷たい人だとは思いもしなかった。

契約するんじゃなかったな。

でも駄目だ、私、お金払えない。

会計は全て最上さんが済ませてくれた。

退院の日、タクシーを手配してくれて、私は一人で最上さんのマンションへ向かった。

私が住んでいたアパートから荷物を運び、解約の手続きをしてくれたのも最上さんだった。

私はまだ、松葉杖を使っていないと歩く事が出来なかった。

退院の日も最上さんは姿を見せず、一人寂しく退院した。

タクシーが最上さんのマンションへ到着すると、マンションのコンシェルジュが出迎えてくれた。

「最上様の婚約者の鶴巻梨花様ですね、私、当マンションのコンシェルジュ、佐々木と申します、何なりとお申し付けくださいませ」

「ご丁寧にありがとうございます、鶴巻梨花と申します、よろしくお願いします」

「既に梨花様のお荷物は届いております」

「ありがとうございます」

「お部屋までご案内致します」

そして佐々木さんが案内してくれた。