「俺と別れて、やつとやり直したいってことだな、俺は借金さえ払ってもらえればなんの問題もない、さっさと荷物をまとめて出て行け」

「違います」

梨花に背を向けた途端、予想しなかった言葉に驚いて、振り向いた。

「私、最上さんの妻を演じ続けます、そうしたら借金は払わなくていいんですよね」

「やつを愛しているんじゃないのか」

「私、わかったんです、愛していたら側を離れなかったんじゃないかって」

「七年前はそうだったかもしれないが、再会してずっと探してくれていて、五億の借金を払ってくれると聞いて、気持ちが動いたんじゃないのか」

「私、最上さんの側を離れたくないんです、たとえ最上さんが私を愛してくれなくても、私が望めば最上さんの側にいられるんですよね」

「そうだな」

「もし、最上さんに愛する女性が現れても、私がサインしなければ、離婚出来ないんですから、私はずっと最上さんの側にいられますよね、覚悟してくださいね」
「俺を脅すのか」

「はい」

「いい度胸じゃねえか」