目の前で震えて泣いている梨花を「ごめん」と言って抱きしめた。

梨花の身体を起こし、毛布をかけて、頬の涙を拭った。

「梨花、やつをまだ愛しているんだな」

「違います」

俺は思いもよらない梨花の言葉に戸惑った。

「確かに純一さんと結婚を望んでいましたが、嘘をつかれたのはかなりショックでした、それに三葉ホテル御曹司だったなんて、身分の違いに震えました」

梨花は言葉を続けた。
「その時、純一さんの側にはいられないと思ったんです、七年振りに再会して、ずっと私を探してくれていたなんて驚きましたし、それに五億の借金を払うなんて信じられませんでした」

俺は黙って梨花の気持ちを探っていた。

「最上さんの側にいて、妻を演じ続ければ、借金は払わなくていいと言われていたことはちゃんと覚えています、その道が私にとって最良の選択肢だとも思います、でも……」

俺は梨花の出した結論が分かり、自分から答えを口にした。

梨花に言われたらショックがでかい、情けない男だ。