その時、最上さんが私の腕を掴み引き寄せた。

「誰が梨花を連れて行っていいと言った」

「梨花さんは君を愛しているとは思えない、この結婚には裏があるんじゃないのか」

「へえ、鋭いな、教えてやるよ、梨花は俺の治療と手術を受けた、治療費と手術代、俺が梨花の面倒を見た生活費、引っくるめて五億借金あるんだよ、だからこいつは生涯をかけて、
俺の妻として俺の指示に従ってもらう契約を交わした」

「契約結婚ってことですか」

「そうだ」

「では、その五億の借金、僕が払います、ですから梨花さんと離婚してください」

「本気で言ってるのか」

「僕は本気です」

私は思わず口を挟んだ。

「ちょっと待ってください、五億って嘘ですよね」

「嘘じゃねえ、俺の手術はそう簡単に受けられない、俺の腕前は神の領域を超えてるからな」

「そう言うの自分で言います?」

「俺は天才だ、梨花は幸せ者だぞ、俺の手術を受けられたんだからな」