でも、はじめに言われたら、何かが変わっていただろうか。

私は純一さんのもとを去った。

あれから八年の歳月が流れたある日、私の目の前に純一さんが現れた。

「梨花さん、梨花さんだよね、やっと見つけた」

そう言ってニッコリ微笑んだ純一さんが立っていた。

「純一さん」

「ずっと探していたんだよ、なんで僕の側にいてくれなかったの」

「だって、純一さんは三葉ホテルの社長になる人だったから、もう社長さんになったんでしょう」

「うん、梨花さんと結婚したいと思ってあれからずっと探していたんだよ」

「私は……」

そこへ現れたのは最上さんだった。

「梨花、どうしたんだ」

「最上さん、今日は早いんですね」

「ああ、緊急オペもなかったし、急患もなかったからな」

最上さんは視線を純一さんに向けた。

「梨花に何か御用ですか」

「僕は三葉ホテル社長の三葉純一と申します、梨花さんのお兄様でしょうか」

「はあ?梨花は俺の妻だ」

純一さんは驚きの表情を見せた。