「結婚」

この時、純一さんと一年以上お付き合いをしていたが、純一さんの住んでいる部屋に、一度も行ったことがなく、仕事も何をしているのか教えてもらえなかった。

「純一さん、純一さんと結婚はとても嬉しいんですが、私は純一さんのことを全くと言っていいほど知りません、どんなところで生活しているのか、なんのお仕事をしているのか教えて頂けないと、プロポーズの返事は出来ません」

純一さんは、しばらく考えて、言葉を発した。

「僕は三葉ホテルの副社長をしている、親父が海外にもホテルを持っており、将来は三葉ホテルの社長を継ぐことが決まっているんだ、都内のタワーマンションに住んでいる」

「なんで黙っていたんですか」

「だって、梨花さんはお金持ちが嫌いだと言っていたから言えなかった」

「私を騙すつもりだったんですか」

「騙すだなんて、ただ言い出せなかっただけなんだ、梨花さんに振られるのが怖かった」

純一さんは私を説得しようと必死だった。

はじめに言って欲しかった。