「そうですよ、ずっと一人で寂しくて」

「へえ、早く俺に抱かれたいって」

「もう、そんなこと言ってません」

「俺は早く梨花を抱きたい」
「最上さん」

私はこの間の最上さんとの抱擁を思い出していた。

「もう切るぞ」

そしてスマホは切れた。

最上さんは私の貧血を心配して連絡くれたのかな。

そう、私は貧血気味で、足首の骨折もふらつきが原因だった。

そんな時、私の人生を大きく揺るがす出来事が起こった。

以前私はプロポーズされたことがあり、でもその彼とは別れることになった。

それは十年も前の事だった。

二十八歳の時、あるホテル業界の御曹司と知り合った。

三葉純一、三葉ホテルの副社長だった彼は、自分の身分を偽り、私と付き合うことになった。

当時コンビニで働いていた私は、ギリギリの生活をしていた。

削るとしたら食費しかない。

お腹が空いた。

もう、ふらついて歩けない。

今思うと、この頃から貧血があったのかもしれない。