「残念ながら瑞穂の心の中に俺はいないようだ」

「どう言うことだ」

「瑞穂は最上、お前を愛している」

「俺は別れを告げられたんだ、去るものは負わない主義だ」

「おい、最上」

俺を呼び止める安藤の声は俺には届かなかなかった。

あれから七年の歳月が流れた、今更瑞穂は何しに来たんだ。

患者としてもわざわざ俺の病院に来るなんてどう言うつもりだ。

寄りを戻す気持ちも許す気持ちもなかった。

私はレントゲンを撮って貰い、診察のため待っていた。

最上さんの診察も無事終わった。

「梨花、帰りはタクシーで帰れよ、俺の指示に従わない時は
お前のはじめてを俺がもらう、覚悟しておけ」

「ちゃんと言うこと聞きます、あんな痛い思いはしたくないし、最上さんにはあげません」

「ほお、強気に出たな、この唇に抱いてくださいって言わせて見せる、覚悟するんだな」

そう言って最上さんは人差し指で私の唇に触れた。

ピクッと震えて、顔が真っ赤になった。

「気をつけて帰るんだぞ」