それはそうだろう、年上の婚約者、そして何より二十五歳の時の彼女と結婚すると、当時注目を浴びていたからだ。

それなのに結婚相手はその彼女では無い。

急に現れて最上先生を手玉に取り、将来の医院長夫人の座をまんまと獲得したと……

病院の関係者は私をチラチラみる。

そんな時、レントゲンの順番を待っていると、看護師がひそひそしゃべっている声が聞こえて来た。

「ねえ、今日、最上先生の元彼女が病院へ来ていたんだって」

「やっぱりね、あの婚約者じゃ、元彼女の方が魅力的だもんね、こんな事言っちゃ悪いけど、絶対最上先生あの婚約者を抱く気にならないんじゃないの」

「そうだよね、怪我して受診しに来たみたいだけど、最上先生と寄りを戻そうと思ってこの病院に来たんじゃないの」

最上さんが唯一結婚したかった彼女、立花瑞穂さん。

振られたって言ってたから、彼女が寄りを戻すって言ったら、私はどうなるの?

借金払えないよ。

住むところもない、お金もない、私、最上さんに離婚されたら生きて行けないよ。