私も婚姻届をやめようと思われちゃうかなって、そうしたら嫌だなって……」

「おい」

「えっ」

「言葉に気をつけろ、お前、今、俺の事を好きだって言ってるのと同じだぞ」

私は頬が真っ赤になるのを感じた。

「男は単純だから、そんな言葉並べると勘違いするぞ」

「だって……」

私は心の中で最上さんが好きって叫んでいた。

最上さんは「そこに座れ」と言って、彼女との事を話し始めた。

「彼女の名前は立花瑞穂、確かに結婚を考えていた、俺が二十五歳の時の事だ」

俺は医学部をトップの成績で卒業して、研修医として働いていた。

そこに患者として現れたのが立花瑞穂だった。

俺は彼女に惹かれて交際を申し込んだ。

ところが研修医は時間に追われる毎日で、約束はほとんど守る事が出来なかった。

彼女は寂しがり屋で、他の男性と浮気した。

そんな事になっているとは想像も出来ず、俺は彼女との結婚を考えていた。

「瑞穂、やっと休みが取れそうなんだ、俺のマンションに泊まりに来いよ」