「はじめての女は抱く気にならない、でもどうしても抱いて欲しいなら抱いてやる、どうだ」

「お断りします」

「そうか、じゃ、一年間同居人と言う事で」

最上さんは私から離れて部屋を出て行った。

なんか涙が出て来ちゃった、何の涙なの?

抱いて欲しかったから?一年間でこの生活が終わっちゃうから?

私、最上さんが好きなの?

でも最上さんは私を好きじゃない、単なる契約結婚の相手だ。

「おい、パスタ食べるぞ」

「はい」

あっ、抱き上げて寝室に連れてこられたから、松葉杖はキッチンに置きっぱなしだった。

「あのう、松葉杖を持って来てください」

最上さんは寝室を覗いて私がベッドに腰掛けている状態を確認して、寝室に入って来た。

「あのう、松葉杖……」

最上さんは私を抱き上げた。

「しっかり掴まっていないと落とすぞ」

「はい」

私はしっかりと最上さんの首に手を回ししがみついた。

最上さんは頬を私の頬に擦り寄せて、抱きしめる腕に力が入った。