最上丈一郎は最上総合病院の跡取り息子で天才的外科医である。

俺は三十二歳を迎え、父親の最上総合病院医院長、最上権蔵は結婚しろとうるさく言ってくる。

「お前、独身を貫き通すつもりか」

「そんな事誰も言ってないだろ?めんどくさいんだよ」

「今付き合っている彼女とは結婚しないのか」

「誰の事言ってるのかな、今付き合っている女はいない」

「なんだ、また振られたのか」

「あのな、人聞きの悪い事を言わないでくれ、振られたんじゃなくて自然消滅って言ってくれ」

「なんかよく分からないが、お前についてきてくれる女性はいないのか」

俺はため息をついた。

また、その話かよと嫌気がさす。

俺は医院長室を出て行った。

「おい、話はまだ終わってないぞ」

親父の言葉を聞かず、バタンとドアを閉めた。

女と言うのは、休みになるとデートしろ、仕事から帰ると話に付き合えと、うるさくて仕方ない。
俺は疲れて帰ってくるのに、勘弁してくれ。

そのうち、何も言わずに姿を消す。

その繰り返しだ。