京が笑ってつばきに何か喋りかけようとしている。
それを見てつばきが京に近づこうとするが京が突然消えてしまった。
辺りを見渡しても誰もいない。京様、と何度も名前を呼び続けそのうち声が枯れ、涙も枯れ、その場に座り込む。

「つばき、つばき、」
「あ、…京様、」

目を開けると京が心配そうに眉根を寄せ、つばきの名前を呼んでいた。
夢だったようだ。安堵したと同時に直に来るであろう未来を予期しているのかと思うとぞっとした。
汗ばむ体を起こして京に笑顔を向けた。

「寝言が酷かった。俺の名前を呼んでいたようだが…」
「大丈夫です。心配かけてごめんなさい。嫌な夢を見ておりました」
何かを察したようにそうかと言った京はつばきに水をさし出す。それを受け取ると喉に流し込んだ。
「昨日は二度目の“未来”を見たせいで疲れたのだろう。今日はゆっくり休むんだ。幸い俺も休みだ」
「ありがとうございます」
「女中たちにも不用意な外出をなるべく避けるようみこから伝えてもらっている。彼女たちにも何かあるといけない。つばきの目のことについては、俺しか知らないから安心してくれ」

つばきは小刻みに頷いた。