京に案内され、つばきは二階へいく。
「女中たちは離れで暮らしている。二階には使っていない部屋がいくつかあるからそこを使ってもらう」
はい、と返事をしながら京についてゆく。二階にも重厚感のある家具がある。
二階の西側の部屋は和室だった。襖をあけると既に布団に鏡台、机も用意してあった。
全て新品に見えた。
「私なんかにわざわざ部屋まで用意してくださりありがとうございます」
「気にするな。箪笥二竿に衣服はしまってある」
京が箪笥に近づき、そこを開けるとつばきは目を見開いて固まった。
そこにはやはり夜伽として買われたつばきに用意されたとは思えないほど高価な生地の着物が並んでいる。
それだけではない、洋装のワンピースも二着あった。
ワンピースは着たことはなかった。
清菜はよく高価なワンピースも着ていたことを思い出し、つばきはつい顔を顰めてしまった。それを見た京がつばきの頬に手をやり無理やり顔を上げさせる。
絡まる視線に言葉が詰まった。
「あ…っ」
「急に気分でも悪くなったか」
「いえ!違います。あ、あまりに私には不釣り合いな着物やワンピースですので…これは流石に着ることは出来ません」
「なんだ、そんなことか。俺が手配させたんだ、お前が着なければ捨てるだけになる」
「しかし…―」
「いいから、黙って言うことを聞け」
「…」
「お前にぴったりだと思ったんだ」
(どうしてだろう。この人の瞳に見つめられると途端に何も喋られなくなる。何も考えられなくなる…。私はどうかしてしまったの?)
京の手の温度がひんやりと冷たい。
煩い鼓動を抑えるようにゆっくりと深呼吸をしようとするが、まだ触れられている頬のせいでそれは収まるところか加速する。
「ありがとう…ございます」
「唇が震えている。俺に触れられるのは嫌か」
無意識に震えていたようだ。嫌ではない、だが、緊張しているのだ。
真一文字に唇を結び、首を振った。
「女中たちは離れで暮らしている。二階には使っていない部屋がいくつかあるからそこを使ってもらう」
はい、と返事をしながら京についてゆく。二階にも重厚感のある家具がある。
二階の西側の部屋は和室だった。襖をあけると既に布団に鏡台、机も用意してあった。
全て新品に見えた。
「私なんかにわざわざ部屋まで用意してくださりありがとうございます」
「気にするな。箪笥二竿に衣服はしまってある」
京が箪笥に近づき、そこを開けるとつばきは目を見開いて固まった。
そこにはやはり夜伽として買われたつばきに用意されたとは思えないほど高価な生地の着物が並んでいる。
それだけではない、洋装のワンピースも二着あった。
ワンピースは着たことはなかった。
清菜はよく高価なワンピースも着ていたことを思い出し、つばきはつい顔を顰めてしまった。それを見た京がつばきの頬に手をやり無理やり顔を上げさせる。
絡まる視線に言葉が詰まった。
「あ…っ」
「急に気分でも悪くなったか」
「いえ!違います。あ、あまりに私には不釣り合いな着物やワンピースですので…これは流石に着ることは出来ません」
「なんだ、そんなことか。俺が手配させたんだ、お前が着なければ捨てるだけになる」
「しかし…―」
「いいから、黙って言うことを聞け」
「…」
「お前にぴったりだと思ったんだ」
(どうしてだろう。この人の瞳に見つめられると途端に何も喋られなくなる。何も考えられなくなる…。私はどうかしてしまったの?)
京の手の温度がひんやりと冷たい。
煩い鼓動を抑えるようにゆっくりと深呼吸をしようとするが、まだ触れられている頬のせいでそれは収まるところか加速する。
「ありがとう…ございます」
「唇が震えている。俺に触れられるのは嫌か」
無意識に震えていたようだ。嫌ではない、だが、緊張しているのだ。
真一文字に唇を結び、首を振った。