冷泉白楽は苦しんでいた。唸っている。唸りつつ、『全国制服名鑑vol.3』というマニアックな雑誌をひたすら捲っていた。
「やばい絵だな…」
「ん?何が」
呆れる鷹司に目もくれず、真剣に白楽はページをめくってゆく。
「なんつーか…変態っぽいぞ」
「いいから手伝えよ、女子高生の制服なんて全部おんなじに見えるな…塔子ちゃんのリボンって何色だったか覚えてるか?」
「あんな暗い中でしか見てないから全然覚えてない、無理だろ。お前のコートかぶってたし、俺運転してたし」
「なんで電話番号聞かなかったんだろう」
その時白楽の手が止まる。
「見つけたか?」
「違う…上田さんを呼べ!井上さんもだ!」
洗濯をしたあの2人のどちらかなら、もっと塔子の制服を覚えているはずだと考えた白楽は、お手伝いさんの2人を呼んで満面の笑みで制服名鑑やら制服コレクションやら女子高生の写真集を手渡した。もちろん塔子の高校を特定する為だ。
「高校を特定したらどうするつもりなんだよ」
「偶然を装って出逢うまで待ち伏せする」
正攻法ってそれかという疑問をもちつつも、鷹司にも他のアイデアは無かった。願わくば自分が張り込みをさせられないことを祈るばかりである。変な仕事を言いつけられる前に退散しようと鷹司は退室しようとしたが、呼び止められる。
「鷹司!」
振り返ると白楽の顔は今まで見たことがないくらい晴れやかだった。
「俺初めて知ったわ、恋をするってこんなにカッコ悪いんだな!多分今まで本気で誰かを追いかけたことなかった。ダサくて恥ずかしいな!」
こんなに清涼感のあるストーカーもいないだろうと鷹司は苦笑した。