「じゃあ、僕はどう?」

「えっ?」

「僕なら玲子と結婚して都築総合病院継げるよ」

「もう、冗談言わないで、さ、行こう」

玲子はいつもこの調子で、僕との未来の話ははぐらかされてしまう。

剣崎の家のインターホンを鳴らすも、「坊っちゃまはお休み中なので、お引き取りください」と門前ばらいを受けた。

「スマホに連絡してみるか」

しかし、連絡はつかなかった。

それから程なくして、剣崎は入院した。

病院なら会えるかと思ったが、考えが甘かった。

まさか、面会出来ない程重症とは思いも寄らなかった。

玲子はすっかり気落ちして笑顔が消えた。

それから間もなくだった、剣崎が亡くなったのは……

玲子も僕も途方にくれた。

医者を目指す友を亡くすなど、人生は何が起こるかわからない現状を突きつけられてしまった。

玲子は全く人が変わったみたいになった。

大学を休学し、外に一歩も出る事はなかった。

僕は精神科を専攻した。

それは玲子の今後に不安があったからだ。