「戸倉、お前はいいよな、好きな道にすすめて」

剣崎のいつもの口癖だ。

「戸倉くん、父の養子になって都築総合病院を継いでよ」

「玲子、お前はどうするんだよ」

「私は好きな道に進む」

「なんだそれ」

「いや、剣崎総合病院を頼む」

「お前らな、勝手なこと言うなよ」

僕達はいつも冗談を言って笑っていた。

まさか剣崎がこの世からいなくなるなんて、想像も出来なかった事だった。

ある日、剣崎は大学の講義を休んだ。

珍しい事もあるんだなと、玲子と話していた。

「剣崎くん、最近顔色悪いなって思ってたんだよね」

「そうだな、僕も気になっていた」

「剣崎の家に行ってみるか」

「うん、そうだね」

僕と玲子は剣崎の家に見舞いに行った。

剣崎の家は凄い豪邸で、坊ちゃん育ちだと納得した。

「玲子、来たことあるんだろ?」

「ないよ、いつも外で会ってるんだから」

「そうか」

「私と剣崎くんはこのまま、付き合っても未来はないし、お互いに友達止まりの付き合いって思ってるから」