僕は都築光、都築総合病院の精神科医である。

旧姓戸倉光、戸倉家の長男だ。

本来なら戸倉建設株式会社を継ぐ立場なのだが、僕は医者になるのが夢だった。

奨学金で医大に入り、猛勉強をした。

そこで知り合ったのが、都築玲子、都築総合病院のご令嬢だった。

玲子は一人娘の為、親の病院を継がなければならない。

ところが勉強について行けず、僕はいつも勉強を見てあげていた。

「全然わからない、私はやっぱり向いてないのかな」

「かもしれねえな、料理得意なんだからいい男見つけて結婚したらどうだ」

「だめよ、私は自分で都築総合病院を継ぐか、当病院を継げる医者と結婚しなくちゃいけないの」

「大変だな、ご令嬢も」

当時玲子は僕の親友剣崎優と付き合っていた。

運命とは皮肉なものだ。

剣崎もまた剣崎総合病院を継がなくてはならない身だった。

僕は長男なのに自分の好きな医者の道に進んで羨ましがられていた。

それも、僕の弟、戸倉慶に感謝だ。



僕と剣崎、そして玲子はいつも一緒だった。