「他の男性との望まれない関係は貞淑な奥様のイメージに大きな影響があります」

「あのな、望まれない関係って、美鈴は何の関係もなかったんだ、失礼な事言わないでくれ」

「世間はそうは思いません」

「兎に角俺は美鈴とは離婚はしない、以上だ」

俺は怒りに任せて社長室のドアをバタンと力強く締めた。

廊下を足速に歩いていると、後ろから「慶」と真莉が声をかけた。

「感情的になってどうするの?落ち着いて」

「真莉、これからお前のことを近藤って呼ぶから、お前も俺を社長と呼んでくれ」

「急にどうしたの?」

「俺は美鈴と結婚した、この事実は一生変わらない、お前とは以前恋人関係だったが、今は社長と秘書の関係だ、仕事以外の付き合いはないからな、だからきちんと一線を引いた方がいいと思うんだ」

この時、真莉の中で美鈴に対して憎しみが湧いていたなど、想像もつかなかった。

「わかりました、社長」

「お前の秘書としての仕事ぶりは高く評価している、これからもよろしく頼むよ、近藤」