俺はちょっとムッとした態度をわざと見せた。
「俺は誰にでも着いて行くような男だと思ってたのか」

「そんなことはありません」

「俺はこれでも一途に美鈴を思って来たんだけどなあ、二十年だぜ」

「でも、私はあの時の私とは違います」

俺は美鈴の口から語られるまで待つつもりだったが、俺が気にしていないことを早く伝えないと、美鈴は自分を責めて俺の前から姿を消しかねないと思った。

「美鈴、十五年前の未遂事件の事を気にしているのか?」

「えっ?どうしてそれを……」

俺はゆっくり深呼吸をして語りはじめた。

「俺は初めて美鈴に拒絶された時、何か美鈴に取って忘れられない過去のトラウマがあるんだろうと、調べさせて貰った、俺は事実を知った上で美鈴とこれからの人生を歩んで行こうと心に決めたんだ」

美鈴は驚いた表情を見せた。

「慶さんは気にならないんですか、たとえ未遂とは言えども、望まない形での見ず知らずの男性が……」

そこまで言いかけて、美鈴の手が小刻みに震え出した。