美鈴は俺の呼びかけにびっくりした様子で振り向いた。

「家出にしては随分と近いな」

美鈴に近づくと、目に一杯の涙を溢れさせて、俺を見つめた。

「美鈴、帰ろう、もう俺お腹ぺこぺこだよ」

そう言って両手を広げると、美鈴は迷いもせず、俺の腕の中に飛び込んで来た。

俺は美鈴を強く抱きしめて「心配したんだぞ、俺の側から離れるな」そう言って美鈴のおでこにチュッとキスをした。

美鈴は俺の背中に腕を回しギュッと抱きしめた。

「美鈴、もしかしてヤキモチ妬いてくれたのか?」

「えっ?」

美鈴は急に俺から離れて狼狽えた姿を見せた。

「美香ちゃんとはなんでもないよ、確かに抱きつかれたけど、俺はなんとも思ってないから」

「でも……」

「でも何?」

「美香に迫られたら嫌だと思う男性はいないと思います」

「確かに美香ちゃんは魅力的だけど、俺は美鈴がいいな」

「真莉さんだって元彼女だったわけだし、誘われたら……」

「美鈴、俺の事そんなに信用出来ないのか」