私はミネラルウオーターに少し口をつけて、真莉さんに頭を下げた。

「お部屋をお取りしましょうか、まだ社長は挨拶がありますので」

「いや、悪いが、美鈴と先に帰る、あとはよろしく頼む」

「美鈴、帰ろう」

「私なら大丈夫です、慶さんは残ってご挨拶を」

そこまで言いかけて、慶さんは私の言葉を遮った。

「俺がもう疲れたんだ、だから美鈴と一緒に帰るよ」

「はい」

なんて答えていいかわからなかった。

疲れただなんて、慶さんの口から初めて聞いた言葉だった。

「美鈴、帰るぞ」

慶さんは私の手を取り、駐車場へ向かった。

駐車場には慶さんのプライベートの車が停められていた。

慶さんは助手席のドアを開けてエスコートしてくれた。

「よし、出発だ」

「慶さん?具合は大丈夫ですか」

「具合?俺は元気だよ、美鈴こそ大丈夫か?」

「すみません、もう大丈夫です」

「そうか、ならこれからデートしよう」

慶さんは満面の笑みを浮かべてはしゃいでいた。

「デートですか?」