「会社の化粧室で女子社員の方が話しているのを聞いてしまって」

「全くおしゃべりな社員だな」

「すみません、個室に入っていたら聞こえて来ちゃって」

「美鈴は悪くないよ」

「真莉さんと付き合っていたんですよね」

俺は決心したかのように話し始めた。

「真莉とは確かに付き合っていた、でも振られたんだ」

美鈴は信じられないと言う表情で俺を見た。

「どうして振られたんですか」

「俺のここに別の女性がいる事を見抜かれたんだ」

俺は自分の手を心臓の部分に当てて力強く言葉を発した。

「別に好きな女性がいらしたんですか」

「俺が五歳の時の初恋の女性」

「五歳?」

俺は美鈴の驚く顔を見てクスッと笑った。

まさか自分の事だとは思っても見ないんだろう。

俺は話を続けた。