「我が社の下請け業務をお願いしたいと思いまして、そのために借金を自分が払います」

「どうしてそのようなことを、うちは御社の下請けを出来る程、技術が高いわけでもありません」

「無理はなさらず、今まで通りの仕事をして頂ければ構いません」

「しかし」

「その代わり、お嬢さんを自分にください」

「はい?」

「お嬢さんと結婚させてください」

父も母も戸倉慶の申し出にびっくりして言葉が出なかった。

「おい、二階にいるだろ、早く呼んでこい」

父は母に指図した。

「はい、今呼んで来ます」

母は慌てて二階に上がって来た。

二階にいたのは私と妹。

妹は二十歳、とても可愛くて、誰からも好かれるタイプ。

それに引き換え私は冴えないアラフォー、暗くて、全くいいとこ無し。

「今、戸倉慶さんがいらしてお嬢さんをくださいって、結婚させてくれたらお父さんの会社の借金を払ってくれるって」

「戸倉慶?あの、戸倉建設株式会社の御曹司?」

「そうよ、早く着替えて、勿論結婚するでしょ?」