膝を抱えて途方にくれていると「僕、一人?大丈夫?」と声をかけて来た女性がいた。

笑顔が可愛くて、優しい眼差しの綺麗なお姉さんだった。

その女性は、バッグからお菓子を取り出して五歳の俺に差し出した。

お腹が空いていた俺は、遠慮なくお菓子にぱくついた。

うまい、なんて美味しいお菓子なんだと、もう一つ摘んだ。

「何か飲み物買ってくるわね」

俺に飲み物を買って来てくれた。

俺はゴクゴクと飲み物を飲み干した。

「お名前は?」

その女性は俺に名前を聞いて来た。

「戸倉慶、五歳」

「お利口さんね、自分の名前を言えて」

当たり前のことだがその女性は、俺を褒めて頭を撫でてくれた。

心の中で俺は子供じゃないと反抗心を剥き出しにしていた。

「私の名前は葉村美鈴、二十歳よ、よろしくね」

俺は美鈴に恋心を抱いた。そして美鈴と結婚するとこの時から決めていた。

これが美鈴との出会いである。

それから俺は中学、高校、大学とある程度の女性と付き合った。