◇
「空〜!今日遊びに行こ〜!舞香も紗良も来るよね!!」
「あっ、ごめん今日バイトだわ…パスで」
「私も用事あるの…ごめん」
申し訳無さそうに手を合わせる二人。
だが、普通に考えてそんなに都合よく遊ぶ日が空いているわけがないことは皆分かっていた。
「そっか〜」と言っているくらいで終わると思っていた。
満場一致でさよならで終わるはずだった。
可奈子を除いては。
「え〜友達付き合いよりもバイト優先するとか、そんなのいいの?って感じなんだけど」
「えっ…」
「ちょ、可奈子それは流石に言いすぎじゃ…」
そう言うとアイプチで作られたきれいな二重の瞳がこちらを見据える。
何か言いたげに口を開きそうなところで紗良が軽く言葉を遮る。
「いや、いいよ空。私の用事ほんとすぐ終わるから…」
「えっほんと〜?ありがとう紗良大好き〜!」
ギュッと抱きつくように紗良のほうへダイブする可奈子。
それに「うん…」と少しだけうつむきながら応える紗良を見ても何も言えない自分がいた。
"可奈子がどう思うか"ということを言い訳にして何も言えないのを正当化していることは分かってる。
「んん…ごめんっ!やっぱ私は無理…!!今月のお小遣いも前借りしてるし、遊ぶお金がほんとになくて…」
舞香の気持ちも本当にわかる。
可奈子はお金持ちの家の子で、遊ぶお金くらいなら親に頼めば容易に貸してくれるだろう。
そんなリッチな可奈子以外は、皆しがない学生だ。
可奈子みたいにぽんぽんお金も頼めない。
そんな中でも可奈子は自分はあるからと言って1週間に2、3回程度は遊んでいる。
おしゃれなカフェや高そうなメイク道具。
高いけれどお洒落で流行っているような服。
私達には手も足も出ないようなものを毎回何個も買っている。
あんな自分中心な性格なのに、自分ばかりがものを買っているのは嫌なようで、他の子たちにも「これオススメ〜!はいこうにゅ〜!」といって毎回一つは少し高めな化粧水やらシャドウやらを買わせる。
それにプラスアルファで、大体カフェなどではドリンクなどを最低一つは購入しないといけないという制度があるから、ゆっくり話すには安くて話しやすいファミレスなどがいいにも関わらず、可奈子が選ぶのは毎回雰囲気のある少しお高めなカフェ。
そのせいで私達はお小遣いも前借りしないといけないなるし、親にバレたら怒られるというおまけ付き。
私達と可奈子は少し見ている世界が違うのだ。
格差を感じる。
性格も私とは少し違う。
上位層にいるはずなのに、なぜか越えられない壁がある。
「えぇ〜舞香ノリわる〜」
「可奈子。私達は可奈子みたいにそんなに頻繁に遊びに行けるほどお金がないんだよ…」
必死にそうなだめると可奈子は諦めて口をとがらせつつも了承してくれた。
「えぇ〜…まぁ今日はいいわ。てゆうか空、あなんた何様〜って感じなんだけど!」
今度の標的は私か。
とりあえずあしらっておこう。
「はいはい。速くいかないと遊ぶ時間なくなるけどいいの?」
「確かに!それはだめ〜!!早く行こうー!!」
そう言ってお金とスマホくらいしか入っていないであろうぺしゃんこのリュックサックを持って教室を出ていった。
私達はその一部始終を見て顔を見合わす。
「可奈子ちゃん、ああゆうところだけ行動早いよね…」
「ほんとに。ありがとう空。正直めちゃくちゃ助かった。今日、好きなバイトの先輩がやめちゃうから、最後にバイト終わりにパーティーしようってなって」
「それって男の人?女の人?」
恋バナ好きの波がぐぐぐと舞香のほうへ身を乗り出す。
なにか感じ取るものがあったのだろう。
舞香は「いやー…」といいつつも目が魚のように泳いでいる。
これは黒だ。
「え〜なになに〜!舞ちゃんその人に告白するの〜??」
「できたら、したいかな…」
「キャー」と波が叫ぶ。
波は本当な恋愛話が好きだ。
クラス全員の恋愛関係はおろか、気持ちまでも把握しているような逸材である波は、クラスのみんなから恋愛相談を受けている。
だから全員分把握しているんだろうな。
でも。
「でも私、舞ちゃんのも気になるけど、空ちゃんのほうが気になるな〜!だって私、空ちゃんの好きな人だけ把握きてないし!」
「いないし、する必要もないです」
「いや!だって…!」
ぶーぶーと言うようにこちらを見てくる波。
いないのは本当だ。
少し前まではサッカー部のエースの男子がかっこよくて気になってはいたが、もちろん彼女持ち。
私の恋はすぐに砕かれて終わった。
「空ちゃん、最近なんか変だもん…空眺めてばっかりいるし、この前見た空ちゃん、人が変わったような雰囲気出してて。前までの休み時間みたいな感じじゃない…」
「波…!もう、そのくらいに…」
「あれだって、空ちゃんのせいじゃないのに、皆が空ちゃんが…って言うから…」
「波ちゃん…」
なんの話をしているの。
分からない、波が何を言いたいのか、なんで舞香が止めるのか、分からない。
「あれ」ってなに…なんのこと。
波、教えてよ、隠さないで教えて。
ズキン。
痛い、頭が痛い。
ズキズキと気色悪い。
ズキン
痛い、うるさい、静かになって、収まって…
「ねぇ〜!皆まだ来ないの〜!早くいかないと新作売り切れちゃうでしょ!!!」
ガラガラと扉が開いて、少し不機嫌そうな顔の可奈子が現れた。
「あっ…」と波が小さく吐息を漏らすと、舞香も紗良も波も全員いつもの様子に戻った。
可奈子が、関係あるの?
「あはっ、ごめんごめん、すぐ行くって〜可奈ちゃんっ」
「ご、ごめん可奈子。みんなで少し考え事してた。皆は悪くないからさ」
可奈子は私の方を見て、少し考えるような間が空いてから口を開いた。
「えー!私抜きでやったの?まぁいいや!それより早く早く!!売り切れたら困るんだから」
ほっとしながら紗良と波と鞄を持って教室を出る。
やっぱり、どれだけカーストの上に行っても、可奈子には…
違う、私は可奈子に勝ちたいんじゃない。
じゃあ、私は何がしたいの。
「空〜!今日遊びに行こ〜!舞香も紗良も来るよね!!」
「あっ、ごめん今日バイトだわ…パスで」
「私も用事あるの…ごめん」
申し訳無さそうに手を合わせる二人。
だが、普通に考えてそんなに都合よく遊ぶ日が空いているわけがないことは皆分かっていた。
「そっか〜」と言っているくらいで終わると思っていた。
満場一致でさよならで終わるはずだった。
可奈子を除いては。
「え〜友達付き合いよりもバイト優先するとか、そんなのいいの?って感じなんだけど」
「えっ…」
「ちょ、可奈子それは流石に言いすぎじゃ…」
そう言うとアイプチで作られたきれいな二重の瞳がこちらを見据える。
何か言いたげに口を開きそうなところで紗良が軽く言葉を遮る。
「いや、いいよ空。私の用事ほんとすぐ終わるから…」
「えっほんと〜?ありがとう紗良大好き〜!」
ギュッと抱きつくように紗良のほうへダイブする可奈子。
それに「うん…」と少しだけうつむきながら応える紗良を見ても何も言えない自分がいた。
"可奈子がどう思うか"ということを言い訳にして何も言えないのを正当化していることは分かってる。
「んん…ごめんっ!やっぱ私は無理…!!今月のお小遣いも前借りしてるし、遊ぶお金がほんとになくて…」
舞香の気持ちも本当にわかる。
可奈子はお金持ちの家の子で、遊ぶお金くらいなら親に頼めば容易に貸してくれるだろう。
そんなリッチな可奈子以外は、皆しがない学生だ。
可奈子みたいにぽんぽんお金も頼めない。
そんな中でも可奈子は自分はあるからと言って1週間に2、3回程度は遊んでいる。
おしゃれなカフェや高そうなメイク道具。
高いけれどお洒落で流行っているような服。
私達には手も足も出ないようなものを毎回何個も買っている。
あんな自分中心な性格なのに、自分ばかりがものを買っているのは嫌なようで、他の子たちにも「これオススメ〜!はいこうにゅ〜!」といって毎回一つは少し高めな化粧水やらシャドウやらを買わせる。
それにプラスアルファで、大体カフェなどではドリンクなどを最低一つは購入しないといけないという制度があるから、ゆっくり話すには安くて話しやすいファミレスなどがいいにも関わらず、可奈子が選ぶのは毎回雰囲気のある少しお高めなカフェ。
そのせいで私達はお小遣いも前借りしないといけないなるし、親にバレたら怒られるというおまけ付き。
私達と可奈子は少し見ている世界が違うのだ。
格差を感じる。
性格も私とは少し違う。
上位層にいるはずなのに、なぜか越えられない壁がある。
「えぇ〜舞香ノリわる〜」
「可奈子。私達は可奈子みたいにそんなに頻繁に遊びに行けるほどお金がないんだよ…」
必死にそうなだめると可奈子は諦めて口をとがらせつつも了承してくれた。
「えぇ〜…まぁ今日はいいわ。てゆうか空、あなんた何様〜って感じなんだけど!」
今度の標的は私か。
とりあえずあしらっておこう。
「はいはい。速くいかないと遊ぶ時間なくなるけどいいの?」
「確かに!それはだめ〜!!早く行こうー!!」
そう言ってお金とスマホくらいしか入っていないであろうぺしゃんこのリュックサックを持って教室を出ていった。
私達はその一部始終を見て顔を見合わす。
「可奈子ちゃん、ああゆうところだけ行動早いよね…」
「ほんとに。ありがとう空。正直めちゃくちゃ助かった。今日、好きなバイトの先輩がやめちゃうから、最後にバイト終わりにパーティーしようってなって」
「それって男の人?女の人?」
恋バナ好きの波がぐぐぐと舞香のほうへ身を乗り出す。
なにか感じ取るものがあったのだろう。
舞香は「いやー…」といいつつも目が魚のように泳いでいる。
これは黒だ。
「え〜なになに〜!舞ちゃんその人に告白するの〜??」
「できたら、したいかな…」
「キャー」と波が叫ぶ。
波は本当な恋愛話が好きだ。
クラス全員の恋愛関係はおろか、気持ちまでも把握しているような逸材である波は、クラスのみんなから恋愛相談を受けている。
だから全員分把握しているんだろうな。
でも。
「でも私、舞ちゃんのも気になるけど、空ちゃんのほうが気になるな〜!だって私、空ちゃんの好きな人だけ把握きてないし!」
「いないし、する必要もないです」
「いや!だって…!」
ぶーぶーと言うようにこちらを見てくる波。
いないのは本当だ。
少し前まではサッカー部のエースの男子がかっこよくて気になってはいたが、もちろん彼女持ち。
私の恋はすぐに砕かれて終わった。
「空ちゃん、最近なんか変だもん…空眺めてばっかりいるし、この前見た空ちゃん、人が変わったような雰囲気出してて。前までの休み時間みたいな感じじゃない…」
「波…!もう、そのくらいに…」
「あれだって、空ちゃんのせいじゃないのに、皆が空ちゃんが…って言うから…」
「波ちゃん…」
なんの話をしているの。
分からない、波が何を言いたいのか、なんで舞香が止めるのか、分からない。
「あれ」ってなに…なんのこと。
波、教えてよ、隠さないで教えて。
ズキン。
痛い、頭が痛い。
ズキズキと気色悪い。
ズキン
痛い、うるさい、静かになって、収まって…
「ねぇ〜!皆まだ来ないの〜!早くいかないと新作売り切れちゃうでしょ!!!」
ガラガラと扉が開いて、少し不機嫌そうな顔の可奈子が現れた。
「あっ…」と波が小さく吐息を漏らすと、舞香も紗良も波も全員いつもの様子に戻った。
可奈子が、関係あるの?
「あはっ、ごめんごめん、すぐ行くって〜可奈ちゃんっ」
「ご、ごめん可奈子。みんなで少し考え事してた。皆は悪くないからさ」
可奈子は私の方を見て、少し考えるような間が空いてから口を開いた。
「えー!私抜きでやったの?まぁいいや!それより早く早く!!売り切れたら困るんだから」
ほっとしながら紗良と波と鞄を持って教室を出る。
やっぱり、どれだけカーストの上に行っても、可奈子には…
違う、私は可奈子に勝ちたいんじゃない。
じゃあ、私は何がしたいの。