教室で、東堂君を見つけた。
 あ、東堂君にまだ、お礼言っていなかった!ちゃんと言わないと!
「あ、東堂君!」
「ん?昨日、大丈夫だった?」
「うん。その…昨日は、ありがとう」
 私は東堂君に頭を下げた。
「いえいえ、…小栗さんが無事で、良かったじゃん」
 会長さんが言っていたこと気になるな…
「あのさ、さっきまで生徒会室にいたんだけど、会長さんが東堂君が私のこと、教えたって言ってたんだけど…それって本当?」
「うん。まあ、そんなとこー。」
 そんなとこって…なんか、曖昧。
「……だけど、本当にありがとう。マジで助かった。」
 これだけは、ホントに感謝している。
「別に平気だっての。じゃあ、図書室いこーぜ!」
 図書室?まあ、あれは、かっこよかったし。付き合ってやるか。
 私と東堂君は図書室へ来た。
「久しぶりに『枕草子』借りようかなー」
 私がそう言うと。
「『枕草子』?なんで?」
「あの時、『枕草子』のさ、『春はあけぼの』って東堂君が言ってくれたじゃない。それで、なんか、安心したっていうか…だから、借りようかなーって。」
 そう、あの時、東堂君が私の気持ちを紛らわしてくれたの。
「ふーん…安心か。」
 そうだ!東堂君に聞きたかったことが……。
「ねぇ、東堂君はなんであの時、『枕草子』が思い浮かんだの?すぐに出てくるなんて、古典が好きとかじゃないと…」
 私が聞くと。
「思い浮かんだ理由はー、ふと、目に入った景色が森の方向だったからさ、それに、奇跡的に蛍までいたし。『蛍と夏』といったら、俺は『枕草子』を思い浮かべるってわけ。」
 じゃあ、なんで古典なんだろう?『蛍と夏』だったら、他にも例えるのあるよね。
「じゃあ、なんで古典なの?」
「ん?古典?あー、前に小栗さんと、ここであった時言ったじゃん。俺、古典好きだって。それに、小栗さんからしたら、他のことで例えられるより、好きなことで例えてくれた方がいいのかなぁって思ったから。」
 東堂君って以外とやさしいの?
「そっか、ありがとう。」
 もうそろそろ寮に戻らないと。
「じゃあ、私は寮に戻るね。」
 私は東堂君に向かって、手を振ろうとしたその時、
「待って…」
 え?――……!
 軽く触れるだけだったが、私の唇と東堂君の唇が重なった。
「じゃあ、バイバイー」
 東堂君の耳は若干赤かった。
 私を置いて、東堂君は図書室を出て行ってしまった。
 い、今、私、と、東堂君とキスしたー⁉
 私は急いで、寮に戻った。