三日目になり、キャンプファイヤーが今日の夜にある。
私はキャンプファイヤーの実行委員なので、準備に広場に行った。
こんな時に限って、ジャズと蓮が同じ実行委員なのだ。
「……」
「……」
気まずい。
「えーっと、小栗は、これを運んでくれ」
「はい」
私は木材を持たされた。
脚が痛いのにこんなに持たされるんなんて。
皆、黙々と運んでいる。
早く持って行かないと!
私は木材を運び、仕事が終わったので休憩していた。
「脚……大丈夫かな」
ジンジンと痛み始めた。
「……!」
痛みで顔を歪めた。
「大丈夫か?」
いつの間にか隣にいたのは蓮だった。
「あ……だ、大丈夫。」
私は急いで立ち上がり山の方へと駆け出した。
「里奈……!」
脚が痛い。だけど、蓮と今は会いたくない。
私は山の中に入っていた。
「ここ、どこ?」
どうしよう、迷ってしまった。
出口がわからない。見えるのは、同じような木だけ。
「誰か、誰か助けて……」
弱々しい、情けない声が出た。
「――!里奈!!」
この声は蓮だ。
聞き覚えのある声に安堵を覚えた。
「……蓮。どうしてここに――……」
私が話終える前に強く抱きしめられた。
「ご、ごめんなさい……」
「里奈、ケガはない?大丈夫?」
「う、うん。ありがとう……」
私はお礼は言ったが、蓮を直視できずにいた。
「ほら、もうすぐ夜だよ、キャンプファイヤー始まる」
「――私のこと、嫌いじゃないの?」
「え?どうして?嫌いになるはずない」
「どうしてそんなこと言うの?だって、だって……昨日、見たでしょ?」
私だって、あれは予想外だったけれど、何も知らない人が見たら勘違いしてしまうだろう。
「嫌いになんてならない。もちろんあれは、驚いたけど……里奈のことは、ずっと大好きだ」
蓮の言葉が私の心の傷を癒してくれた。
私と蓮は、ゆっくりと山を出ていき、広場へ行った。
「キャンプファイヤーに火をつけます!」
実行委員の子が言った瞬間、皆が盛り上がった。
「蓮と見れるなんて最高だよ!」
「俺も」
キャンプファイヤーが終わり、部屋に戻ろうと歩いていると
少し気掛かりなのは、ジャズ。
ジャズとはあれ以来話していない。
雨が降って来た。急いで戻らないと
「あ……」
「……」
ジャズと会ってしまった。
「今日は雨だね。僕の心みたい」
「え?」
確かに今日は雨。
だけど、なんでジャズの心まで。
もしかしたらこの前かな。
ジャズの本音はなんだろう。
わからない。
「率直に言えば、僕は里奈のことが好きだ。だけど、あの時わかった里奈が本当に好きなのは、あの彼氏だね。残念」
ジャズは、悲しそうな顔をする。
「ごめん、本当にごめんなさい。私は、ジャズと友達でいたい」
「うん。ありがとう。悔しかったけど、後悔はしていないよ」
そう言ってジャズは行ってしまった。
「ありがとう……ジャズ」
私は自然と言葉が零れた。
今日は四日目。
午前中は、皆で遊び、午後は学園に戻る。
「えっと、集合写真を撮ります。集まってー!」
先生から号令がかかり、皆集まった。
「並び順は何でもいいです」
「……蓮!あたしの隣!その隣は……小栗さんよ!」
指示をするように言ったのは笑真ちゃん。
「う、うん。笑真ちゃん、私も入っていいの?」
「……何言ってるのよ。それに、笑真ちゃんって……まあ、いいわ」
蓮が笑真ちゃんの隣。私は蓮の左隣。右隣が笑真ちゃん。
「五組も入るかー?」
先生が聞いた瞬間。
「先生ナイス!それいいじゃん!」
クラスの子や、五組の子がゾロゾロとやって来た。
私の隣は。
「僕の友達!」
「ジャズ……!」
「ほら、撮るぞー!」
カシャッ!
カメラの音がした。
「めっちゃ楽しかったー!」
「ね!楽しかった!」
後日。
修学旅行で撮った写真が届いた。
私は蓮と話していた。
「里奈。めっちゃ可愛い!襲いたくなる」
そう言って蓮は頬に甘いキスを何度も落とした。
キスの嵐だ。
「……もう!可愛いって言ってもらえるのは、ありがたいけど……化け狐さん、襲わないでください!」
私たちの学園生活は、まだまだこれから。
『夏は夜。
月のころはさらなり。
やみもなほ、蛍の多く飛びちがひたる。
また、ただ一つ二つなど、
ほのかにうち光りて行くもをかし。
雨など降るもをかし。』
こんにちは。
私の名前は、藤原彩羽っていいます。
私は、高等部の三年なの。
高等部の寮長もやっているし、生徒会のお手伝いもしているわ。
私は本当は生徒会メンバーではないんだけどね。
会長の由愛。
副会長の明華ちゃん。あと、書記の子がいるわ。
実は私と由愛は同じ学年なんだけど、明華ちゃんは、二年なの。
明華ちゃんは、三年生なんじゃないかって疑うくらい頭が良くて、いい子なの。
いつもみたく、朝から仕事をしていると。
「由愛ちゃんが理事長に呼び出されるって珍しいわね」
「そうですね。……ですが、会長が何かやらかしてしまう……なんて、そんな心配はきっといりませんね」
「ふふっ。そうね」
由愛がやらかしてしまったら、学園が大騒ぎね。
キィー……バタンッ。
由愛が帰って来た。
「会長、理事長に何か言われましたか?」
「実は今日、転入生が来るらしい。高等部の一年だ。……彩羽、寮は、空いている所はあるか?」
「うーんと……」
空いている部屋……あの子のところなら。
「あるわ!小栗里奈ちゃんって子のとこなら……そこでいいかしら?」
「ああ。いつなら伝えに行ける?」
「夕食の後でもいい?」
「わかった。笠井すずという子だ」
「わかったわ」
私たちは、お昼ご飯をカフェテリアでしていたら。
「わぁ!会長と明華先輩、それに彩羽先輩も……!」
少しだけ、騒がしくなっちゃった。
私たちは、あまりここでお昼ご飯は食べないから、ちょっと驚かれた。
「ありがたいって言うべきか、それとも、そんなに驚くことかって言うべきか、迷ってしまうな」
「そうね~!私も驚くけど?」
なんでかって、ここで食べようって言ったのは、由愛だからね。
「そうか?彩羽が驚くことなのか?」
「私が驚いてるのは、ここで食べてることじゃなくて由愛ちゃんが誘ってくれたことに驚いているって言うのが正確かしら」
まあ、それが一番ありがたいって言いたいわ。
「由愛、誘ってくれてありがとね」
「こうやって、喋りながら食べるっていう事も大切な事の一つかもな」
「そうですね」
「そうよね」
私たちは仲良くそして、協力していくことが大事よね。