図書室には、東堂君がいた。
「あ、東堂君」
 私が声を掛けると。
「あ、小栗さん……」
「どうしたの?顔赤いよ」
「えっと、その……俺さ。小栗さんのこと、好きなんだ!」
 それだけを言い残して、東堂君は図書室から、出て行ってしまった。
「……えー⁉」
 私は大きな声で叫んでしまった。
 幸いにも私しかいなかったので誰にも聞こえてはいなかったと思う。
 寮に戻ると。
「どうしたの?里奈、何かあった?」
 言ってもいいのかな。
「……じゃあ、一個すずに質問していい?」
 この前聞きそびれてしまったこと。
「いいよ!」
「すずって東堂君のこと好き?」
 すずが眉間にしわを寄せていた。
「うーん……好きか嫌いかって言われたらどちらでもないんだけど、前にも言ったけど、ホントに私は興味ない!正直言って」
 すずの顔はウソをついているようには見えなかった。
「で?どうしたの?」
「えっと、さっきね。東堂君に会って、『好き』って言われたの」
 見る見るすずの目が丸くなっていた。
「えー!ヤバいって!」
 そう言った後、すずは笑った。
「やっと、言ったんだね。東堂君」
「やっと?」
「うん。やっと。里奈は答え言った?」
「いや、言ってないの。なんて答えればいいのかわからなくて」
「答えなんて、もう出てるじゃん」
「……?もう出てるの?」
「うん。だって、言われた時に嫌な感じした?」
 嫌な感じはしなかった。
 ただ、困ってしまっただけ。
「いや?ただ……困っただけ」
「なら、里奈が誘拐されかけた時助けてくれたの嬉しかった?ドキドキした?」
「うん……」
「だったら、答えだせるんじゃない?」
「わ、わかった」
 答え、ちゃんと言わなきゃ。
 翌日、東堂君を図書室に呼び出した。
「あ、小栗さん……」
 私が待っていると音も無く、東堂君が入ってきた。
「東堂君、呼び出しちゃってごめんね」
「全然平気。……で、何を言ってくれるのかな?」
 緊張する。
「えっと、昨日の答えなんだけど、私も好き!東堂君こと好き!」
 私は顔を真っ赤にして、言った。
 私って、東堂君に興味なかったんじゃなかったっけ。
「……ありがとう。あー……俺的に長かった」
「何が長かったの?」
「んー……、なんていうか距離が縮まるまでっていうか。まあ、そんな感じ」
「てか、俺ら付き合う?」
「え、え?」
 これこそ、何て言えばいいの。
「うん……?」
 私は曖昧な返事をしてしまった。
「どっち?」
「……付き合う!」
 こうして、私のドキドキの学園生活が再スタートした。