「せんせーすごーい!」

「素敵な演奏をしてくださった桐谷さんと春花先生にありがとうの拍手をしますよ」

園長先生の掛け声とともに拍手が沸き上がる。
貴重な体験をした園児たちはその後も春花と静に群がり、やがて保育士たちに諫められて順番に教室へ戻って行くため列を成した。

「突然のお願いだったのに引き受けて下さりありがとうございました」

「いえ、こちらこそ不審者のようにウロウロしてしまって申し訳ありません。お騒がせしました。実は僕は春花さんと同級生で、春花さんに会うためにここに来ました」

「春花先生に?」

「ずっと捜していたんです。春花さんは僕の初恋の人だから」

園長と静が会話しているのを聞き耳を立てながら園児たちの誘導をしていた春花だったが、静の発言により思わず足が止まる。こっそりと静を窺うが、その視線はバッチリと捉えられ逸らすことを許されない。

「春花、仕事が終わるまで外で待ってる。迎えに来るから」

頷くことはできなかったが、頬がピンクに染まってしまったことでハッと我に返り、そのまま春花はそそくさと園児たちと教室に戻った。

「春花先生、そこのとこ詳しく!」

「なれ初め教えてください」

「後で話聞かせてよ~」

と同僚の先生方に声を掛けられ、春花はかつてないほどに戸惑った。

どうしてこうなったのだろう。

そんなことを漠然と考えつつも、静に会えた喜びが後からじわじわと押し寄せてきて、泣きたい気持ちになった。

(私はまだこんなにも静が好きなんだ)

自分から離れたのに。
誰よりも応援するために離れたのに。
会えたことがこんなにも愛しく感じるなんて。