静は海外へ、春花も職場復帰しいつも通りの日常が始まった。寂しさや物足りなさは密な連絡を取ることで回避され、お互い順調なスタートを切っていた。
「山名さん、ニュース見たわよ!さすが桐谷静!」
「はい、ありがとうございます!」
二ヶ月が過ぎた頃すぐに大成功をおさめたニュースが飛び込んできて、恋人の活躍に春花は誇らしい気持ちになった。店に静が来訪してからというもの、社員たちの桐谷静推しも増している。
やはり静が海外に行くことは正しかったのだと証明しているようだった。
「そうそう、山名さん。新規の生徒さんが入りそうなんだけど、受け持ってもらえない?」
「すみません、ありがたいお話ではあるんですけど……」
「まだ手首に違和感があるの?」
春花が無意識に押さえた左手首を見て、葉月は心配そうに伺う。
「そう……ですね。申し訳ないです」
「ううん、いいのよ」
「はい、ありがとうございます」
春花は申し訳なく眉を下げた。
捻挫した左手首はもうすっかり治っている。痛むこともなければ何かに不自由することもない。元通りの状態だというのに、ピアノを弾くときだけほのかに違和感を感じていた。
「はぁー」
無意識に出るため息は、春花の心をモヤモヤさせる。日々の生活に不満はないのに、なぜこんなにもやるせない気持ちになるのか。
「静、頑張ってるなぁ」
遠く離れた恋人を想いながら、春花はレッスン室に入っていった。
「山名さん、ニュース見たわよ!さすが桐谷静!」
「はい、ありがとうございます!」
二ヶ月が過ぎた頃すぐに大成功をおさめたニュースが飛び込んできて、恋人の活躍に春花は誇らしい気持ちになった。店に静が来訪してからというもの、社員たちの桐谷静推しも増している。
やはり静が海外に行くことは正しかったのだと証明しているようだった。
「そうそう、山名さん。新規の生徒さんが入りそうなんだけど、受け持ってもらえない?」
「すみません、ありがたいお話ではあるんですけど……」
「まだ手首に違和感があるの?」
春花が無意識に押さえた左手首を見て、葉月は心配そうに伺う。
「そう……ですね。申し訳ないです」
「ううん、いいのよ」
「はい、ありがとうございます」
春花は申し訳なく眉を下げた。
捻挫した左手首はもうすっかり治っている。痛むこともなければ何かに不自由することもない。元通りの状態だというのに、ピアノを弾くときだけほのかに違和感を感じていた。
「はぁー」
無意識に出るため息は、春花の心をモヤモヤさせる。日々の生活に不満はないのに、なぜこんなにもやるせない気持ちになるのか。
「静、頑張ってるなぁ」
遠く離れた恋人を想いながら、春花はレッスン室に入っていった。